オンチェーン分析家のZachXBT氏は26日、暗号資産(仮想通貨)取引所「Axiom(アクシオム)」の従業員らが内部ツールを悪用し、顧客の機密データを基にインサイダー取引を行っていた疑いを告発した。2025年初頭から、特定の個人ウォレットの活動を不正に追跡し、利益を得ていたとされる。
アクシオムは2024年に設立され、現在までに3億9,000万ドル(約609億円)以上の収益を上げる急成長中の取引所だ。疑惑の中心人物であるブルックス・バウアー氏は、ニューヨークを拠点とする同社のシニア事業開発(BD)担当者だ。ZachXBT氏は第三者から調査を依頼されており、依頼者は明かされていない。
調査の過程で入手された非公開の通話録音によると、ブルックス氏は内部ツールで全ユーザーのウォレットアドレス・紹介コード・UIDなどの個人情報を照会できた。彼はこの権限を悪用して影響力のあるトレーダーの非公開ウォレットを特定し、その機密情報を自身の取引に利用する「インサイダー取引」を行っていた疑いがある。
主な標的としたのは、SNS等で影響力を持つKOL(影響力のある人物)だ。一部のKOLは、フォロワーに向けて宣伝し価格が上昇する前に、非公開のウォレットで密かにトークンを仕込んでいる。この非公開データを内部から閲覧できれば、先回りして高い確度で利益を得られるため、非常に価値が高い。
具体的な動きとして、2025年4月から8月にかけ、ブルックス氏は特定トレーダーの非公開ウォレット情報を示す内部画面を仲間と共有していた。さらに彼らは内部データをもとに、複数のKOLのウォレットをまとめたリストまで作成し、組織的に追跡を企てていた。
ブルックス氏が仲間に送った顧客の機密データ(出典:ZachXBT)
ZachXBT氏はブルックス氏のメインウォレットの特定に成功しており、これにより同氏の不審な取引や、利益が複数の中央集権取引所へ送金された形跡が確認された。しかし、アクシオム内部の注文ログを確認できない現状では、外部のブロックチェーン記録だけでインサイダー取引を完全に裏付けることは困難だという。
本件は、一介の従業員が全顧客のデータにアクセスできるという、アクシオムのずさんな管理体制を浮き彫りにした。ZachXBT氏は同社に説明を求めると共に、ブルックス氏がニューヨーク在住であることから連邦検事局の管轄となる可能性を指摘し、経営陣に法的措置を検討するよう求めている。
本件を受け、アクシオム側は「カスタマーサポートツールの悪用に衝撃を受け、失望している」との声明を発表した。同社はすでに対象ツールのアクセス権を削除しており、引き続き調査を進め、違反した当事者に責任を取らせる方針だ。「ユーザー第一」の姿勢を堅持するとして、今後も情報を共有するとしている。
中央集権型サービスにおいて、内部の権限管理は信頼の根幹だ。本件のような「身内の犯行」は、技術的防御以上に組織の倫理と厳格なアクセス制御が不可欠であることを示している。ユーザーは利便性だけでなく、運営体制の透明性やセキュリティの検証状況にも注意を払う必要がある。
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