● 現在のBitcoinは「デジタルゴールド」ではなく、金融フロー主導の弱気検証フェーズにある。
● 金は実需・中央銀行買い、Bitcoinはポジション調整主導で動き、需要主体の違いが相関崩壊を生んでいる。
● 現物需要とフローの安定が確認されない限り、金との連動回復は限定的とみる。

CryptoQuantのCEOであるKi Young Ju氏は、Bitcoinは現在「not digital gold period」にあると述べている。この見解は、足元の相関データと市場構造を踏まえると、一定の合理性を持つ。

まず相場フェーズを定義する。現在は弱気相場後の戻りを挟みつつも、流動性回復が十分に確認されていない検証局面である。方向性は現時点では弱気が優勢と整理できる。価格の絶対水準よりも、需給の質、資金フローの持続性、レバレッジの安定度といった構造要因が支配的な段階にある。

添付のBitcoin–Gold相関(90日)データでは、相関係数が明確にマイナス圏へ低下している。これは、金が上昇する局面でBitcoinが同方向に動いていない、むしろ逆方向に動く局面が増えていることを示す。重要なのは「価格がどう動いたか」ではなく、「なぜ同じマクロ環境下で異なる反応を示しているのか」である。

最大の要因は、需要の性質の違いにある。金は現在、中央銀行による継続的な買いと地政学リスクを背景とした安全資産需要に支えられている。これは実需ベースであり、価格変動に対する感応度が相対的に低い構造的フローである。保有主体は国家や準公的機関が中心であり、短期的な価格調整でポジションを大きく変える動きは限定的である。

一方Bitcoinは、ETFを通じた資金流出入、デリバティブ市場でのレバレッジ調整、清算の連鎖といった金融市場由来のポジション変動に強く影響を受けている。需給の主導権は機関投資家やヘッジファンド、短期トレーダーにあり、リスク管理の一環として売買が行われやすい。結果として、マクロ不安が高まる局面では「金は買われ、Bitcoinはポジション縮小の対象となる」という非対称な動きが発生しやすい。

過去にも相関が低下した局面は存在する。2023年の銀行不安時には、金が安全資産として上昇する一方、Bitcoinは初期段階では連動したものの、その後はレバレッジ整理とポジション調整の影響で動きが分離した。2024年後半にも、金が中央銀行需要で上昇する中、BitcoinはETFフロー主導で独自の価格形成を行い、相関は弱まった。いずれの局面でも共通しているのは、「買い手の属性が異なった」点である。

金が実需主導で評価される局面では、価格は安全資産としての役割に収斂しやすい。一方Bitcoinが金融フロー主導で動く局面では、価格はリスク資産やボラティリティ資産として扱われる傾向が強まる。この構造差が、相関崩壊という形で可視化されている。

現在は、Bitcoinがデジタルゴールドとして評価される局面というよりも、流動性とポジション調整に左右される金融商品フェーズにあると整理できる。金と同じ物語で価格が決まる環境ではない。

ただし、反対シナリオも想定すべきである。現物需要の持続的回復、レバレッジの健全な再構築、フローの安定化が確認される場合、Bitcoinは再び「価値保存資産」としての文脈を取り戻し、金との相関が回復する可能性がある。

現時点では、金とBitcoinは異なる主体・異なるフローで動く局面がベースシナリオである。ただし、構造的な現物需要の回復が確認される場合、この見方は見直す必要がある。

オンチェーン指標の見方

Bitcoin–Gold相関(90日)は、過去90日間の両資産の価格連動度を示す指標。プラス圏では同方向に動きやすく、マイナス圏では逆方向に動く傾向を示す。直近は相関がマイナス圏に低下し、金上昇局面でもBitcoinは連動していない。これは両資産の需要主体や資金フローの性質が分離していることを示唆する。

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