● Strategy社のBTC保有量は減少しておらず、強制的な売却は確認されていない。
● 投資額と現在価値の推移は、短期変動に左右されない長期保有戦略を示す。
● 足元の懸念は財務ではなく、主にセンチメント要因と考えられる。
Strategy社(旧MicroStrategy)を巡って、「このサイクルで破綻するのではないか」という見方が市場の一部で広がっている。現在のビットコイン市場は、弱気相場の調整局面における戻りを試すフェーズにあり、方向性としては構造的に弱気が条件付きで優勢な環境だ。こうした局面では、価格変動に紐づいた企業リスクが過度に語られやすい。
しかし、公開財務情報とCryptoQuantのオンチェーンデータを確認すると、短期的なBTC価格下落とStrategy社の即時的な財務危機を直接結びつける見方は、構造的には慎重に扱う必要がある。
まず、オンチェーン上で確認できる最も重要な事実は、Strategy社のビットコイン保有量が一貫して減少していない点だ。
「Amount Held」チャートが示す通り、2020年以降、Strategy社のBTC保有量は段階的に積み上がり、直近では約67万BTC規模に達している。価格が大きく下落した局面を含め、保有量の明確な減少は確認されておらず、強制的な売却や流動性対応が発生していないことがオンチェーン上から読み取れる。
次に、「Total Investment vs Current Value(TotalPaid_WorthCurrently)」の推移が示す構造も重要だ。このグラフでは、Strategy社の累積投資額(Total Investment)が階段状に増加する一方で、現在価値(Current Value)はBTC価格に連動して大きく変動している。注目すべき点は、価格下落局面においても累積投資額が減少していないことである。
これは、Strategy社が短期的な資金繰りや評価損の拡大に応じて保有BTCを処分しているのではなく、長期の資本構成を前提とした保有戦略を維持していることを、オンチェーンデータが裏付けている。
財務構造を整理すると、Strategy社のBTC保有価値は約490〜590億ドル規模と推定される一方、負債は主に転換社債を中心に約82億ドル程度とされる。資産は負債の数倍に相当し、通常の価格変動で直ちに債務超過に陥る構造ではない。また、約22.5億ドルの現金・現金同等物を保有しており、利払い・配当を含む債務サービスを、少なくとも数年はBTCを売却せずに賄える水準にある。
さらに重要なのは、債務の返済期限が2027〜2028年以降に集中している点だ。直近数年に大規模な返済圧力が発生する構造ではなく、短期的な市場変動が即座に資産売却を強いる状況ではない。過去を振り返れば、2021〜2022年の弱気相場において、BTC価格が平均取得単価を大きく下回る期間が約16カ月続いたが、オンチェーン上でパニック売りや大量流出は確認されなかった。この局面は、Strategy社の財務戦略がすでに一度ストレステストを通過していることを示している。
もっとも、リスクが存在しないわけではない。BTC価格が長期にわたり大幅に下落し、かつ将来の返済期に資本市場環境が悪化すれば、リファイナンスや戦略見直しが必要になる可能性は残る。また、オンチェーン上で保有量の明確な減少や、大口流出が確認される場合には、現在の見方を修正する必要がある。
現時点では、Strategy社は短期的なBTC価格変動によって直ちに破綻する局面にはなく、足元で広がる懸念の多くはセンチメント主導と見るのがベースシナリオだ。ただし、オンチェーン構造や財務条件に変化が確認される場合、この評価は見直されるべきである。
オンチェーン指標の見方
このグラフは、Strategy社がいくらでビットコインを取得し、現在いくらの価値があるかを同時に示している。オレンジ線(Total Investment)は累積投資額で、下がらない点は売却が起きていないことを意味する。グリーン線(Current Value)は時価評価で、価格変動に応じた含み益・含み損の変化を表す。レッド線(Realized Price)は平均取得単価で、価格との位置関係から保有戦略の持続性を読み取れる。
デジタル通貨カンファレンス
登録無料
✉️ 今すぐ申し込む


