暗号資産(仮想通貨)市場の2025年は、結局のところビットコイン(BTC)が中心だった。だが2026年に向けて重要なのは、「ビットコインの重要性が変わったか」ではない。変わったのは、需要・流動性・リスクが表れる経路だ。

暗号資産取引所Kraken(クラーケン)のグローバル・エコノミスト、Thomas Perfumo(トーマス・パフューモ)氏は、1月15日付のブログ記事の中で、2026年の市場を「熱狂よりも複雑性が支配する局面」と捉えている。

ビットコインは「マクロ資産」として定着、しかし値動きの質が変化

パフューモ氏は、ビットコインがいまや「マクロ資産として、リスクセンチメントの変化を主導する存在」になったと語る。経済成長はまだら模様、インフレは粘着的、地政学は不安定。こうした環境では、ボラティリティは圧縮されやすい一方、物語(ナラティブ)を起点に急騰急落が起きる。

パフューモ氏は現在の市場を、「以前のサイクルほど陶酔的ではなく、構造的により複雑」と評している。

つまり、「上がる時は全部上がる」ような単純な相場ではなく、流動性の出入り口や投資家の立ち位置が多層化している。

価格発見の主戦場はETFとトレジャリー企業へ

2024〜2025年にかけて、ビットコインの価格形成における主役の一部は、現物市場から機関投資家向けの商品に移った。代表例が米国上場のビットコインETF(例:BlackRockのIBIT)と、ビットコインを大量保有する暗号資産トレジャリー企業(例:Strategy)だ。

クラーケンによれば、2025年だけでETF(上場投資信託)とStrategy(ストラテジー)は、合計で約440億ドル(約7兆円、1ドル=158円換算)の純現物需要を生んだ。それでも、価格パフォーマンスは期待ほどではなかった。

このズレは、市場に「静かに増えた売り圧力」があることを示唆する。

その候補として挙げられるのが長期保有者(いわゆる古参HODL勢)の利益確定だ。保有期間の長いコインが動いた量を示す指標「Coin Days Destroyed」は、2025年第4四半期に単一四半期として過去最高水準に達したという。

パフューモ氏は、暗号資産が「強い株式市場」「AI主導の成長期待」「金などコモディティの高騰」と資金を奪い合う状況にも触れ、結果として「巨大な資金流入を吸収しても、以前のような反射的上昇が起きにくい市場」になったと分析している。

興味深いのは、弱気一辺倒ではない点だ。クラーケンは、システミックリスク指標が抑えられ、ステーブルコインの流動性は過去最高、規制の明確化も進んでいると述べる。

ただし同時に、「イノベーションは加速しているが、複雑性も増している」と警戒する。そしてこの複雑性は、ときに市場の「壊れやすさ」を見えにくくする。

2026年の焦点:6つのテーマ

1)マクロと流動性

成長は控えめ、インフレは粘る。米国は相対的に強いが、利下げペースは2025年ほど速くない。米政策金利は2026年末に3%台前半へ向かう可能性が織り込まれつつ、量的引き締め停止も追い風になるかもしれない。

ただし大きなポイントは「金融緩和は良いニュースとしてではなく、悪いニュースへの反応として来やすい」ことだ。

さらに、FRB(米連邦準備制度理事会)議長パウエル氏の任期が2026年5月に満了する点も不確実性として挙げられている。

2)IBITとStrategyの勢い

ETF流入は2024年より鈍化し、暗号資産トレジャリー企業は株式発行による資金調達が以前ほど有利ではない。オプション市場でも投機的ポジションが縮小しており、強いリスクオンが戻らなければ、これらが「次の上昇エンジン」になりにくいという。

3)米国の規制整備

ここはかなり強気のトーンだ。パフューモ氏は「規制の明確化は理論ではなく、現実の追い風になっている」と述べる。ステーブルコイン法制がオンチェーンのドル流動性を作り替え、次はCLARITY(クラリティ)法案を軸に市場構造改革へ視線が移っている。

4)ボラティリティの異変

ビットコインは史上最高値を更新する局面でも、30日実現ボラティリティが20〜30%程度に留まった。これは歴史的には「天井」ではなく「底」に多い水準で、過去サイクルと異なる動きだ。

また、ビットコインの時価総額ドミナンスが2025年に平均60%超で推移し、投機熱の強い局面で見られがちな50%割れが起きなかった点も「熱狂の遅れ」あるいは「成熟」を示すシグナルだという。

5)現実資産(RWA)のトークン化

2025年における構造的な成長テーマとして、クラーケンはRWAトークン化を挙げる。トークン化資産は約56億ドルから約190億ドルへ急増し、米国債ファンドだけでなく商品、プライベートクレジット、株式にも広がった。

大手米株のトークン化が進めば、オンチェーン流動性と需要の新しい源泉になり得る。

6)DeFiの新しいトークノミクス

DeFiは次の段階として「価値の還元(キャッシュフロー)」を取り込み始めている。Uniswap(ユニスワップ)のプロトコル手数料有効化の議論のように、単なる期待先行のトークンから、持続可能な収益モデルへ移行できるかが鍵となる。

2026年は「静かな強さ」の年になるかもしれない

クラーケンの結論はこうだ。2026年の暗号資産市場は、マクロ不確実性とオンチェーン革新がせめぎ合う。しかし、過去より土台は強い。

「期待はリセットされ、レバレッジは洗い流され、構造的な進展はスポットライトの外で続いている」

市場はもう初期ではない。それでも進化の途中だ。2026年は派手な上昇が約束された年ではないかもしれないが、次の拡張局面を形作る「地ならし」が進む一年になりそうだ。

|文・編集:Shoko Galaviz
|画像:Shutterstock


NEWYEARSPECIAL
創刊特集ラインナップ

New Atlas for Digital Assets ──
デジタル資産市場の「地図」と「コンパス」を目指して