トランプ政権が2025年1月に発足し、SEC(米証券取引委員会)やCFTC(米商品先物取引委員会)、OCC(米通貨監督庁)などの金融当局が仮想通貨規制の方針を大きく見直したことで、米国の仮想通貨規制環境は転換点を迎えました。
また、立法面でも米議会は7月にステーブルコイン規制法「GENIUS法」を成立させ、ステーブルコインの法的位置付けと発行体の規律を明確化しています。
こうした規制改革により、仮想通貨業界は既存の金融システムに組み込まれる新たな段階へ移行したとの見方が示されています。
「米国を仮想通貨の首都に」
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2025年はSEC・CFTC・OCCの対応が進み、仮想通貨を既存制度へ取り込む動きが具体化しました。
SEC(米証券取引委員会)は、前政権までの「訴訟による規制」姿勢を改め、明確なルール整備によって仮想通貨を既存制度に取り込む方針を打ち出しました。
分類基準の策定を通じて長年不透明だったトークンの法的扱いに一定の指針が示される見通しとなる一方で、SECは前政権期に提起された大手仮想通貨取引所への訴訟を一部取り下げ、市場の不確実性緩和にも動きました。
CFTC(米商品先物取引委員会)は、ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)を正式に商品(コモディティ)と認定し、仮想通貨を伝統的な金融商品と同様に扱う姿勢を明確にしました。
また「デジタル資産担保パイロットプログラム」を通じて、ビットコイン・イーサリアム・ステーブルコイン「USDコイン(USDC)」を先物取引の証拠金(担保)として活用することも試験的に認めました。
このプログラムでは仮想通貨にも従来資産と同等の担保価値割引やリスク管理基準を適用し、安全性を確保しています。
OCC(米通貨監督庁)は、仮想通貨企業を連邦銀行制度に取り込む政策転換を図りました。
銀行による仮想通貨のカストディ(保管)や決済代行などを正式に認め、12月にはCircle(サークル)やRipple(リップル)など5社に対しナショナルトラスト銀行の新設を条件付きで承認しています。
これにより主要仮想通貨企業が単一の連邦規制下で全国的にサービスを提供できる道が開けました。
7月に成立した「GENIUS法」では、ステーブルコイン発行体に求められる要件と監督の枠組みが整理されました。
この法律は発行体に対し発行残高の100%を裏付ける準備金の維持を義務付け、準備資産の再担保(リハイポケーション)禁止を定めるなど、デジタル通貨に厳格な健全性基準を課しています。
またステーブルコインを「支払能力が保証されたデジタル米ドル」として法的に位置付けました。
これにより、制度面の不確実性が後退し、仮想通貨市場の参加環境にも影響が及ぶとの見方が示されています。
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2025年の米国における規制改革は仮想通貨の主流採用に大きく寄与し、10月にはビットコイン価格が一時12万6,000ドル(約1,970万円)を超えました。
加えて、ビットコインをはじめとする仮想通貨ETFの普及により機関投資家から個人まで幅広い層が参入しやすい環境が整いつつあります。
米国での制度整備と市場の拡張を背景に、仮想通貨の採用拡大は世界的にも広がっています。
ブロックチェーン分析企業チェイナリシスによれば、2025年のグローバル採用指数ではインドと米国が上位となり、各国で仮想通貨利用が拡大していることが示されています。
規制の明確化による市場の安定化が期待されるとの声がある一方、急速な拡大に伴う投資家保護や金融リスクへの懸念も指摘されています。
こうした評価が交錯する中でも、米国発の「仮想通貨革命」による明確なルール形成の流れは世界の市場に追い風となっており、各国の制度設計にも影響を与えています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=156.36 円)
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Source:Wu Blockchain報道
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